寄生獣!

ヒストリエみてもっかい読みなおしたいなーと思っていて、友達の家で読んだきりでコミックは持っていなかったのでついに購入しました。全8巻の完全版です。

これ巻末と空きページを使った「読者の問いかけに作者が答えた。」というコーナーがあるんですけど、そこでの作者(岩明均氏)の答えがじつにリベラルというか、俗的な常識にとらわれてないような、とにかく知的でかっこいいです。(僕が信者なだけかもしれませんけど)

このコーナーは8冊累計でページ数にすると10数ページくらいになるのかな?既読の方もこれだけでもみる価値があると思います。寄生獣の世界の根幹がよくわかります。


寄生獣は、環境保護や地球について人間も真剣に考えてほしいという意図から、多くの人が尊いと思っていない命達が強大な力を持ち、もし生態系の頂点に存在したら、というひとつの可能性を描いた作品です。


そこでじっさいに人間が守るべき環境とはなんなのでしょう。「地球ですね、わかります(キリッ 」って広義でなく。もっと狭義で言えば身の回りの自然になります。実際に環境保護団体やらボランティアやらいろいろやっているのはコレ(狭義の自然)になります。

人間が人間の生活のためにつくるダムや空港、高速道路などの「人工物」は往々にして狭義の自然を破壊するという理由から問題になります。しかし、広義で考えた場合、地球上に住む生物の一部である人間が生きるために行う自然行動による産物ですから、宇宙視点でみればこれも地球的な自然の成り行きであり自然(広義の自然)となります。

人工と自然については狭義で考えれば反対語ですが、広義で考えればどちらも自然、というわけですね。これが作者の考えであって僕も同じです。


じゃあどうすればいいの? と、思うでしょう?

僕も明確にはわかりません。でも、そう考えることが地球を守る第一歩、スタートになるんじゃないでしょうかね…。(逃げ)



以下、岩明均氏の答え(一部抜粋)


「たしかに自殺しちゃあおしまいなんですが、私は精神的弱さこそ人間の魅力とも考えます。例えば物語で勇気あるヒーローを描く場合、主人公の心に弱さがあればあるほど『勇気』というものを大きく表現できるわけです。はじめから強いヤツはあくまで『強者』であり、『勇者』にはなれません」


「何かに打ち込んでいる人の姿は美しいといいますが、今度登場の由井先生のように夢中になりすぎて、周囲や自分をまるでかえりみないほどになってくると、逆に気味悪くなってきます。より良い社会をつくるためには、いろいろ違った世界の人の話を聞くことが大切です。右翼も左翼も宗教も進学塾も、気味悪くならない程度にお願いしたいと思います」


湾岸戦争などを見ればわかるとおり、アメリカ大統領と言えば正義の為に大量殺人を遂行するほどの存在です。大統領という身分そのものがすでにバケ物なわけですから大統領個人が人間だろうが妖怪だろうが寄生生物だろうが大して変化はないかもしれませんね」


「共存なんて考えなくても、寄生生物の数は人間に比べてずっと少ないわけですから、ちょっとくらい人間を食べたっていいじゃないですか。と、自然を愛する無責任な宇宙人なら言うかもしれません」


「多くの人が人類の未来を考えるのは結構なことだと思います。ただ、人間ひとりが全人類の幸せを願っても何もできません。せいぜい家族や隣近所の幸せ、自分とかかわりを思った人や動植物を思いやるぐらいです。が、それで十分だと思います。人類を救うのは統計ではなく、個人の心の豊かさだと思うからです。」


「あれは私ではなく広川さんの意見です。しかし『寄生獣』は人間のことかもしれません。と言うより生物は全部地球に寄生してるんじゃないでしょうか」



コメントみると、なんだか調査捕鯨の問題とかも微妙にリンクしてたりしますね。とかく人間だけが生物のなかで特別であって絶対神、絶対正義、のように考える人が多い気がしますが、生物として客観視すればそこまでは違わないよね、という視点も持っていたいと思います。

作中の田村玲子と浦上、どっちが悪魔的か考えれば人間も寄生生物も大差はないですし、ミギーも地球上で悪魔にもっとも近い生物は人間じゃないか、と言ってました。最終的には後藤がもっとも悪魔的存在でしたけど。


本編については、デスノートの第一部じゃないですけどとにかくスピード感があって一気に読めます。無駄なエピソードは皆無。その中で新一とミギーのそれぞれの変化や成長がよく描かれています。

田村玲子の哲学的な思想がとても人間的で、僕は一番好きなキャラでした。なので彼女?視点のストーリーはもう少しみたかったな。村野さんも同じかもしれない。けどこれは本編を中だるみさせないためにはしょうがないところ。

あとはね、広川はいいとして後藤がもう少し知的というか、格好良ければなーというのが唯一惜しいところかなあ。ラスボスとしてはやや魅力が薄かった。これは田村玲子にくわれた感があるので仕方ないところもあるけれど、印象として浦上の狂気のほうが目立ってしまったくらいなので勿体無いなあと。それくらい。



大人になった今あらためて読んでも、いろいろと気付かされる作品でした。

寄生獣 完全版全8巻 完結コミックセット

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